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「記憶にございません!」のレビュー、感想など [国内映画]

三谷幸喜監督の映画「記憶にございません!」初見ですが、感想を書きます。公式サイトにはある程度ストーリーが載っていたのでネタバレもしますが、三谷監督のブログを読むと撮影秘話やカットシーンなど情報があり、映画館へ行く前にご覧になるとなお一層、お笑いの取りこぼしがないかと存じます。


■三谷幸喜公式ブログ「ここだけの話」



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あらすじ

史上最低の支持率を叩き出した国民から最も嫌われている悪名高き黒田総理がとある演説中に剛腕大工の一振りによってこぶし大の投石攻撃を受ける。

SPがいるにもかかわらず、黒田総理の脳天に直撃、そのまま病院送りに。

気が付くと、自分が何者かも分からずパニックに陥り病院を脱走。SPや取り巻きを振り切りパジャマ姿で夜の繁華街をウロウロ。通りすがりの酔っぱらいに因縁をつけられ、食堂のテレビで自分が横暴な態度をとる国会中継が放送されると・・・。

警察官に補導されSPにも見つかり公邸に強制連行される。そして医師から小学生以降の記憶を失っているようだと告げられる。


いままでとは全く異なる委縮した黒田総理を見て、首相秘書官は「現職の総理大臣に記憶がないことが公(おおやけ)になる事は問題になる」としてこの部屋にいる医師、事務秘書官、秘書官補のみの極秘扱いに。病院を脱走し出会った国民や警官にも徹底したかん口令を発令。


家族や世話係、SP、官房長官や各大臣、世間にも知られずにやっていけるのか。優しくただの人となった黒田総理の波乱万丈がここから始まる。


映画「記憶にございません!」公式サイト



感想は大いにネタバレも含まれるので、楽しみにしている方は、ここ以降は映画視聴後ご覧ください。

まず三谷監督の作品と言えば「笑い」である。しかも今回は政治が舞台だが時事ネタは一切織り込まず、いつの時代でも観て楽しめるエンターテイメントに仕上げている。そのコンセプトは(公式サイトのプロダクションノート)で語られている。



今回の主人公、黒田総理大臣役は中井貴一さん

知っての通り時代劇からトレンディドラマまで何でもこなすベテラン俳優。NHKでは「サラメシ」で軽快なナレーションを披露。いつも楽しく拝見してます。

CMで見る「記憶にございません」のフレーズは悪い顔が前面に押し出された非常にインパクトがある演技で、映

画館で見たいと思わせた要因の一つだ。




127分という尺だったが、悪い黒田総理の姿は劇中、回想としてしか見られないのはちょっと残念だった。




石を投げつけられ入院したという報道ニュースを有働由美子キャスターが悪態をつきながら伝える。

キャラクタが濃く喋り方も笑いを狙ったものだが、マツコデラックスさんとの絡みなどで時折見せる振り切ったキャラに似て、どう見ても地で行っているように見えてくるから不思議です。




なぜ黒田内閣がここまで支持率が落ち国民が石を投げるほどの怒りを持っているのかという設定は記憶を失った総理が周りに聞きながら徐々に明らかになっていく。そのやり取りも笑いの一つだ。




順番にまず脇を固めるのは三谷組初参戦の怪しい首相秘書官・井坂役のディーンフジオカさん

歌も歌える二枚目俳優だが、今回の役柄はできる男だけではない。正義感と野心を持ち政治家を志したが道半ばで挫折するも、支持率最低の黒田総理の側近としてあんなことやこんなことを画策している人物。


手のひら返しのような路線変更は、黒田キャラに隠れていい人で終わったと思います。




もう一人の側近、熱い事務秘書官・番場役小池栄子さん

コミカルキャラクタを自分のものにして、どこへ行っても独特の動きが面白い役に合っています。出来る女を見せても笑いへ転換できる才能がすごいです。

設定にツッコみたい職権乱用で作らせた総理夫人の冠番組のシーンで、生放送なのにとある理由で夫人がドタキャンし帰ってしまうんですが、その代役として「謎のダンス」を呻きながら踊るシーンが面白かったです。その悶える表情が何を語っているのか気になっています。




さらにもう一人の側近、中身のない秘書官補・野々宮役の迫田孝也さん

まさに補助として各シーンにちょいちょい出て現状をサラッと語っている。濃いキャラが多い中、迫田さんと言えば「集団左遷」で知ってましたが、記憶をなくしている設定を知っている数少ない総理側の割には、ココ!といったシーンは総理の昼食がいつも15倍チーズ増しのピザという事で注文。一人でもらって食べていたという印象。しかもそのピザの裏が異様に焦げているところの方が気になりました。たぶん初見の視聴なので取りこぼしているネタもいろいろあるんでしょうが私としてはこのくらいしか記憶にございません。




退院し、閣僚の集まる場に入った時にまず笑ったのは省エネルックの財務大臣・森崎役の小林隆さん

思いっきり浮いている。その後の「例の件」と「アレがアレして」のくだりはしつこいくらいで笑った。しかも写真の写る内閣改造でよく見る赤い絨毯の敷かれた階段での撮影した姿でも省エネルックなのはずっと一人で省エネルックなの?と含み笑いを残す名シーンだ。




記憶を失ってから、「アレ」とか「この前言ってた」、「例の件」など会う人みんなに言われる程、頻繁に出てくる隠語。わざとらしすぎて、黒田が悪いどころか、閣僚も含めていかにダメダメなのかがよくわかる演出。


井坂に説得され、不安ながら家(官邸)に戻る黒田総理。番場に説明を受けながら付け焼き刃で家族の名前を暗記。疑心暗鬼でドアを開けると入れ違いで若い男性が出ていくところ。大人しめに会釈を返して家を出る男性。番場に説明を求めると、息子・篤彦だという。




反抗期の総理の息子・篤彦役は濱田龍臣さん

家の事を放棄して、金の事ばかり考え世間に嫌われる父の姿を見て失望している息子。尊敬する気はもちろん会話することもない。人間不信になるのも無理はなく、自分の名前(篤彦)さえ忘れられた状況にやけを起こし、警察沙汰になる。後々総理を陥れようとするネタとして使われるのだが、それは置いておく。

名前を忘れているのは記憶障害のせいだが、家族にも伝えられない(夫人に話すとすぐ周りに話す為)ので弁解できないところを黒田役の中井さんのごまかし笑いが実に名演技。

ストーリーが進むにつれ和解し、ラストに近づくと父と子。総理と、総理を目指す子という感動的なシーンに繋がる。笑いとは違った三谷ワールドが感じられる。




マイペースな官邸料理人・寿賀役の斉藤由貴さん

最初、夫人と間違い抱き着いてしまう黒田に対しての対応、しかし「いつもの」でチョコバナナを持ってくるところはケロっとしているところや、アメリカ大統領に手料理を振舞う羽目になり、総理に対し全力で反発したその理由とか、夜中、暗闇でキッチンを探る黒田総理にそうとは知らず思いっきりフライパンで頭を殴るところとか、総理大臣という立場の人に対しての横柄な対応が、斉藤さんのほんわかしたイメージがピッタリ。




訳ありの総理夫人・聡子役の石田ゆり子さん

愛想をつかして不倫している夫人。総理の急変した態度に「何か企んでいる」と不倫がすっぱ抜かれるまで疑い続けている。不倫現場をスクープされ記憶を失う前の黒田には写真が渡っていたようで相当険悪な状態だったようだ。寝顔を覗きこむ黒田にふと目を覚ました聡子とのやり取りは最高。こういったシーンは西田敏行さんだったらなんて思ってみなくもなくもない。




邪悪な官房長官・鶴丸役の草刈正雄さん

実質の敵役、悪ダイカーンである鶴丸にはダンディーな草刈さんらしい一面がある。記者会見のジョークなど国民に好感が持てる役を見事に演じている。

敵とはいえどこか憎めないとは言い難いエンドだったが、実はもう一つのエンディングがあったそうだ。そうなると話は俄然変わってくる。もしDVDの映像特典などで拝めるなら是非購入しようと思いました。




白いスーツの野党第二党党首・山西役の吉田羊さん

テレビに映る国会答弁のくだりは遠目過ぎて蓮舫議員が出演しているのかと思うほど、強気な野党党首を演じている。お決まりの例の件をほのめかし、「時間がないんでしょ」といいながらベットシーンを始めるところが肝。

白から黒への変身シーンはかなりノリノリで演技していたらしく唯一のお色気シーンなので男性なら是非チェックしておくべきポイントだと思います。




謎のフリーライター・古郡役の佐藤浩市さん

金の為なら何でもやるフリーライター。事情を聴き官房長官を窮地に追い込むことに協力するが、最初の古郡との「例の件」に探りを入れるやり取りも面白い。「撒いてきたか」「いや、そこにいる」「3万円」「刻んできたな」など初見のみなのでニュアンスが間違えたらゴメンナサイだがこの2人のやりとりは面白い。

アメリカ大統領との接待ゴルフでの一コマ。会場(映画館内)からどよめきが起きた。こういうことができる役者は強い。

ちなみに接待ゴルフに興じるシーンは茨城・千代田カントリークラブでロケーションしたそうです。茨城県民としてうれしいです。




もちろん今まで紹介した俳優陣だ。高い年齢層の人気があり、上映中でも「あら」「まあ」「やだぁ」といったお囃子(声)はずっと続いていたことは言っておく。これが映画館で映画を見るということだ。




アメリカ初の日系女性大統領・スーザン役の木村佳乃さん

この映画を観て一番驚いたのはこのネイティブな英語力を持った木村さんだ。「所さん大変ですよ」や「鶴瓶の家族に乾杯」でその天然さとおおらかさ、気さくな女性という認識でしたが英語がこんなにペラペラだとは思いませんでした。

日系で金髪ってアメリカ混じって外見はお笑いの方へ寄っていましたが、とにかくその英語力に脱帽です。


大統領の通訳として来日したジェット・和田役の宮澤エマさん

こちらも英語力がすごくて時折みせる「それ通訳するんですか」の顔とか、「必ず迎えに行くって言ったのに」という意味深な総理とのやりとりに、「あ、忘れてた」という番場さん。この裏設定なに?




職務熱心な警官・大関役の田中圭さん

冒頭から始まり、ラストの飛び降りまでずっと熱い男でした。いまやCMやドラマですごい活躍ですが、「ノーコン・キッド」観てました。「あなたの番です-反撃編-」はこれから見ます。




K2プロジェクトの本命、建設会社社長・小野田役の梶原善さん

冴えない外務大臣・牛尾役の飯尾和樹(ずん)

この2人は見た目遊びすぎていますし、どこまでも笑いに特化しています。


総理大臣に投石した剛腕大工・南条役の寺島進さん

大工姿が様になっています。基本これはよくドラマで見る寺島さんです。


やる気のないSP・古賀役の藤本隆宏さん

大関がSPに抜擢されてからはSPらしい仕事がんばってます。


小学校社会科の恩師・柳友役の山口崇さん

「古畑任三郎」にも出てたなんて知りませんでした。


総理夫人の兄であり衆議院議員・鱒淵役のROLLYさん

ROLLYさんがノーメイクで出るという情報はテレビでみましたが、視聴中どの人がROLLYさんなのかわかりませんでした。あとで公式サイトで見てもいまいちピンときませんでした。




長々と書いてしまいましたが、三谷ワールドとしてではなく、娯楽映画としていろんなところにツッコミを入れながらあ、終わり?という映画だと思います。1回では理解できないシーンもありますし、吉田羊さんのお色気シーンももう一度見たいし三谷幸喜公式ブログ「ここだけの話」にはカットしたシーンもかなりあると書いてあるのでDVDの映像特典などで検討して頂ければぜひ買わせていただきます。


以上、三谷幸喜祭りなので、「ステキな金縛り令和バージョン」を見て寝ようと思います。

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